シトロエン


アルベルトは、買い物に来ていた たばこを買いに近くのコンビニでも良かったのだが
愛車 のシトロエンを動かしてやりたかった


ここのところの忙しさで 愛車を放っていた 久々に動かしてやると なかなかエンジンがかからず手間がかかってしまい もう夕暮れ時・・
フランソワ〜ズには、夕食の方は 遅くなると言って断っていた
「アルベルト、急に出かけるなんて今日は久々に全員そろっての食事なのに」
「いや、すまん急のの用事を思い出してしまったんでな」
「用事ならしかたがないわね・・いいわみんなには私から言っておくから」
「すまない」

その時 ジェットが立ち聞きをしていたらしく
「しゃ〜ない フランソワーズ こいつは放っておいて めしにしようや
アルベルト 用事すましたら フランソワーズの手料理残さず食べるんだな
さぁさぁ フランソワーズ行った行った」とフランソワーズの背中を軽くポンッと押した
「もうジェットったら・・」といいつつ食堂へ・・
横目でアルベルトをちらっと見るとすぐに手あげるが そそくさと食堂の方へ消えて行った
アルベルトはジェット達が消えて行った食堂に目をやったがすぐに玄関を出て愛車の待つガレージへ急いだ


―久々におまえにかまう事が出来る 言う事聞いてくれよーと自分に言い聞かせるように


シトロエンのエンジンをかける 
調子がいい
「いい子だ」
走り出す アルベルトは 窓を開ける 風が入ってくる
しばらく 森の木立の中を走る 
不意に景色が変わった
街に近づいている
アルベルトは 思った “たかがたばこの事で”
でも、アルベルトは どうしても愛車をかまってやりたくてどうしようもなかった
ヒルダやビーナを助ける事が出来なかった自分がもどかしく 腹立たしくて
でも、今こうして愛車にかまってやれる自分がいることに
己をかばっていった者達に感謝をしながら・・・
シトロエンは調子よく 快音を響かせていた
町中を走ってコンビニに入る たばこを買うと ふと 雑誌コーナーが目に入った
車の雑誌が置いてある 見渡すと一つの雑誌が目に入った
内容はたまたまシトロエンの特集が組まれてあった
アルベルトは内容も読まずに手に取ると レジへ持っていく
店員は「へぇお客さん シトロエンに興味あるんですね」と声をかけてくる
その問いかけに「あぁ・・・」
店員の突然の声掛にとまどい・・おつりをもらうと
おもわず「ダンケ」 照れくさそうにコンビニを後にした
買った雑誌は無造作に助手席に置かれた
エンジンをかける 彼女はご機嫌よく走り出した ネオンの光が街の中を照らしている
街を抜けると暗がりを走っている途中に街を一望出来る場所があるのでアルベルトはそこで止まった
彼は車を降りて寄りかかりながら、買ってきたばかりのたばこの封を切った
ジッポで火を付けると手に持ち変えて遠くで街の明かりを見つめている

―さて フランソワーズ達がまっているなー
たばこの火をもみ消すと吸い殻をしまった
周りを汚すことにフランソワーズに言われてるからだ

―やれやれー一人思いながらアルベルトは
シトロエンとともにギルモア研究所に引き返していった



ギルモア研究所のガレージでは ジェットがバイクを一人磨いていた
ヘッドライトの光に気づくと「遅かったな」とガレージの前にシトロエンを止めた
アルベルトに声をかける
「あぁ遅くなった」とぶっきらぼうに答えるが
急にジェットが
「お〜い フランソワーズ!!アルベルトが戻ってきたぞう!!めし!!めし!!」
とバイクの磨きをほったらかして 建物の中へ入っていった
とまどうアルベルト
「なんだ〜あいつ」
もうとっくに夕飯は終わってるはず・・どうして? 
荷物を持って玄関にはいるいなやグレートとジョーが玄関で出迎えてる
「アルベルトやっぱり全員で食事したいと思って君が戻るの待ってんだ」
ジョーが言い出した
あっけにとられるアルベルト
「ま、ま、こっちへきなおまえさんがいなくちゃ始まらない」せかすグレート
食堂に入るとピュンマが
「こっちこっち」
「あいや〜004戻ってきてくれたアルね〜〜」
「うん」とG―ジュニア
あっけにとられているアルベルト
テーブルにはごちそうが並んでいた
「フランソワ〜ズ 夕飯はもう終わってるはずだが」アルベルトは
料理を運んでいるフランソワ〜ズに声をかけた
微笑むフランソワ〜ズ
「君ノカエリヲ 待ッテイタンダ」001のテレパシーが頭の中に響く
「さて始めるとするかの〜」
だいたいの料理は運び終わっている
アルベルトは訳が分からなかった それでもイスに座ると いきまり電気が消される
面食らうアルベルト
暗闇から ガラガラとワゴンが運び込まれる大きなケーキだった ろうそくに火がついてる
持ってきたのはジェットだ
「よ!今日は何日だか わかるか? アルベルト」のジェットの問いかけに
「忘れてるのかい おまえさんの何回目の誕生日だね今日は・・・」
グレートはにやけながら 言っている
ポカンっとしているアルベルトに対して
ジェットが「おいおい 忘れるなよ 自分の誕生日を・・」
アルベルトは 思い出していた ―そうだ今日は9月19日―
もう自分の誕生日をどのくらい忘れていたのだろうか
幾度の戦い 傷つき 出会い 別れそして 仲間
いろいろな経験の中で こんな日が来るとは思わずに・・・
「ちゃんと消せよな」とピュンマ
「火付けるのは得意かも」珍しく ジュニア

なんだか アルベルトにとって それがくすぐったくなって

くすっと笑い出す

―たまには こんなくすぐったい日もいいもんだな ヒルダー

アルベルトはそう思いながら ふうっとケーキのろうそくの火を消した
まってましたとばかり
クラッカーがあたりに響いた10個以上・・・
イワンが同時に3個もクラッカーをテレキネスを使って・・
楽しい食事が 始まった



ギルモア研究所のガレージ
アルベルトのシトロエン とジェットのバイクが静かに 月の光を浴びて


たたずんでいる 持ち主が ガレージに入れるまでの間・・・




ふぃん