Geburtstag

「お誕生日、おめでとう」

「おめでとう」

やさしい声が聞こえる。
誰の声だろう。

「おめでとう」

一人の声だけじゃない。何人もの声が聞こえる。
男の人の声、女の人の声、おじいさんの声、子供の声。

どの声もはじめて聞く声ばかり。

でも、僕にはわかったんだ。
きっと彼らは、まだまだ先の未来に、僕が出会う人々。

「ハッピーバースデイ」
笑い声が聞こえる。
暖かいにおいがする。
やさしい風が吹く。
そして。


「おめでとう、アルベルト」

ああ、僕が一番聞きたかった声。
探し求めていた、あの優しい声。

彼女は僕の頬に、軽くキスをする。
そして、僕を抱きしめる。

「今日があなたの生まれた日なのね」
そう、今日は僕が生まれた日。
君に会うために、僕が生まれた日。

今日僕はひとつ年を重ねる。
君に出会う日が、また少し近づいてくる。

君に会える日も、もうすぐだね。
僕は君と出会う日を、楽しみに待っているよ。

君と出会ってから、その先、どんな運命が待ち受けていようと。
僕は、待っている。

君にこうして抱きしめられて、
そしておめでとうと言ってもらう日を、待っているよ。

お誕生日おめでとう。
ハッピーバースデイ・トゥー・ミー。

(終わり)


コメント:2003年の004誕生日のために書いた話です。